もしかしてやまのなでしこ


プジョーに乗ってるみたい。
by yamanonadeshiko
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作家やまのなでしこ

会社帰り、高校生を見ながらこう心の中で呟く。
若者よ、私は君達より出来る事は多いだろう。
しかし、君達は私より出来るかもしれない事が多すぎるのだ。
楽しく、有意義に生きてくれ。

 疲れた体を丸めながら、私は唯一の休息場であるバーに向かった。
地図にも無い、誰も知らない。そんな場所。
秘密のショットバー、
「ようこそバーへいらっしゃいどうぞ」だ。相変わらず店の名前がしつこい。

 店のドアを開けると、珍しく客がちらほら。

だが素人にこのバーはキツいだろう。

「マスター」
 店主が私に気づくより早く、客の声が届いた。
「ウォッカをソーダ割りで」
 あぁ、と私は苦笑いした。そんな頼み方じゃ通用しない。このバーは。
くるぞ、マスターのあれが。

「あのー、ウォッカをソーダ割りで」
「NO」

 出た。NOと言える日本人、ウエットティッシュ伊藤さんのNOだ。
私はやれやれといった感じで腰をおろした。


「マスター」
 私がウエットティッシュ伊藤さんを呼ぶと、
向こうもこっちに気づいたようで「おっ」と短く挨拶してくれた。

先ほどNOと言われた客も、私の注文を興味深く聞いていた。

「マスター、親指を深爪で」
「・・・・そうきたか。30年モノしかねぇぞ」
「願ったり叶ったりだね」

 マスターも多少苦笑いしながら、
   店の奥から大事そうな箱に入った酒を出してくれた。

「作るのに30年かかったよ・・・。これ」
「大事なもんを、悪いね」
「まぁ、大事な客には大事な酒を出すもんさ。
    30年っつっても、30年寝かせたのはこの容器の方だから」
「粋だねえマスター、で、中身は?」
「んー、ヤクルト」

 私は感極まって流れ出そうになる涙を堪えながら、ぐっと一息に飲み干した。
ヤクルトを。・・・・!?違う?これは・・・・ローリーエース!
「マスター、これ・・・」
「実は、あちらのお客さんからだ」
 マスターの指を指す方を見ると、トーテムポールが逆さまに立っていた。
意味は全く解からなかったが、かなり適当に流した。

 こうして大人2人の夜は、静かにふけていった。

「マスターも飲みなよ。おごるよ」
「NO」

 客はだいぶ前に全員帰った。
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by yamanonadeshiko | 2005-11-27 19:44 | 日記
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